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新専門医制度におけるシーリングについて、わたしのまわりで起きたこと

こんにちは。

てんしちゃんです。

今回は、新専門医制度でのシーリングについて書きます。

シーリングってなんとなく概要はしっているけど、実際どんなことが起きるの??

っていう話です。

私はいま専攻医1年目なので、ちょうど去年(2020年)の話になります。

ちなみに私は東京都内なので、他の地域だとまた話はかわるかもしれません。参考までに。

シーリングとは医師の都会集中を避けるための制度

詳しい話は厚生労働省が出しているPDF(外部リンク/PDF)を見ていただきたいのですが、

要するに「都会に医師が多いから、専攻医の人数制限をかけよう~!!」

って感じです。

まあ都会に限らず、その都道府県で余っている(余りそうな)診療科に関して制限をかけよう、っていう制度です。

シーリングがかかると採用人数に上限が生じる

足りていない診療科(産婦人科や外科など)はシーリングはかからなかったのですが、

いわゆるマイナー科や、東京都では内科もシーリングがかかりました。

新専門医プログラムはそれぞれのプログラムごとに〇人まで採用可能、と新専門医機構がきめているのですが、

シーリングがかかった診療科では、

昨年採用した人数よりも採用可能人数が減る

事態になりました。

今までの後期研修では、病院が採用可能であれば後期研修医を何人でも雇うことができましたが、

新専門医制度ではプログラム側で上限がきまってしまったので、

「いままで5人後期研修医採用してたけど、今回シーリングで3人になっちゃったから、3人までしか採用できないよ!」

という感じです。

主にマイナー科が狭き門に

東京都の皮膚科の場合、

2019年度の採用実績86名に対し、2020年度のシーリングは76名になりました。

「去年は86人採用できたけど、今年は76人しか採用できません。」

もし、76人以上の応募があった場合、

専門医プログラムに落ちる人もいる、ということです。

採用試験は4月から7月がほとんど、シーリング人数が決定するのは夏ごろ

新専門医プログラムの専攻医登録は10月中旬となっていますが、

初期研修のマッチングのように一斉に採用を決めるシステムとは違い、

それぞれのプログラム(病院)が独自に採用試験や面接を行う方式です。

「10月中旬にはあらかじめ内定をもらっていてね」という制度になっているので、

病院ごとに4月~7月にかけて採用試験が行われ、内定がでます。

しかし、その年度のシーリング人数が確定するのは夏頃なので、

夏前に試験がある場合は、シーリングの人数が予想より少なかった場合、たとえ内定がでていても落ちてしまう可能性があります。

新専門医プログラムに「のれない」3年目

実際にわたしのまわりでの話です。

都内でも人気のマイナー科医局に入局希望をだしていた子がいたのですが、

当然シーリングがかかってしまい、

その年の採用枠が

卒業生の入局希望者+大学病院で初期研修採用の人(2年目にがっつりマイナー科ローテーション)

の人たちだけで埋まってしまいました。

その子は市中病院研修で、その大学の出身でもなかったため、

専門医プログラムでの採用はなりませんでした。

現在どうしているかというと、その医局に入局したうえで、

来年度の専門医プログラムにのる、という方法をとっています。

話は脱線しますが、もし医学生の方でマイナー科希望、かつ入局したい医局が決まっている人は、シーリングの観点からは大学病院での初期研修をおすすめします(上記のように、卒業生に次いで大学病院での初期研修医が優先採用されるため)。

連携プログラムで採用される3年目も

もし応募者がシーリングの枠を超えてしまった場合、

新専門医制度では、「連携プログラム」を使うことで採用枠を広げることができます。

要するに「シーリングにかかっていない地域で一定期間研修をする」というものです。

たとえば、採用は東京都の病院だけど、千葉県で2年働かなければならない、

といった感じです。

地域偏在を解消するための意図ですね。

期間限定で専攻医を増やしたところで定着しないなら意味ないよね…

関連病院のプログラムを利用する場合もある

たとえばある大学病院の医局に希望者が10人いて、プログラム採用枠が8枠しかない場合、

残りの2人はどうするか?

いままでのように、専門医プログラムに乗らない?もしくは、連携プログラムをつかう?

もう一つの手段として、関連病院のプログラム枠を使うというものがあります。

つまりその医局の関連病院であるA病院(市中病院)で、新専門医制度プログラムが承認されていれば、

「大学病院のプログラムで採用できなかった2人を、そっちのプログラムで採用してよー。」

っていうことですね。

大学の関連病院なので、プログラムの構成的にもほとんど変わらない(大学病院+関連病院ローテ)なのがメリットです。

つまり都内マイナー科で、市中病院プログラムがあるように見えても、実際には大学病院入局が必要だったりするのはこのパターンです。

マイナー科に限らず、内科でもこの現象は起きていて、

わたしのいま採用されている市中病院では、

私のように入局していない人が半分、関連の大学病院に入局しているひとが半分

といった感じです。

初期研修マッチングへの影響

初期研修中に志望科はかわる、とは思いますが、

今後、シーリングを見据えて初期研修先を選ぶのは重要になるかもしれません。

特に東京都など、都会の場合です。

マイナー科を考えている人は、先ほども述べたように大学病院で初期研修するほうが入りやすいだろうし、

大学病院ではなく市中病院で初期研修したい人も、将来入局したい大学の関連病院、という基準で研修先を選んでもいいかもしれないです。

おわりに

あんまり実態がよくわかってない?シーリングについて書いてみました。

実際に2020年の専攻医採用を経験した私の感想としては、

マイナー科は入局できるかわからなくて大変だし、初期研修先の病院にそのまま残るのはとても楽

って感じです。

なので、今後は初期研修の病院選びにも影響がでてくるんじゃないかな…と思っています。

おわり。